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木下晋展 「祈りの心」
妻の希望で、
足利市立美術館で開催されている木下晋展「祈りの心」
を見にいってきました。

木下氏は、10Hから10Bまでの鉛筆を使い、
畳一畳ほどの大きな紙に肖像画などを精密に書き上げる画家です。

認知症の老人やホームレスなど、
華やかさと対称の位置にある人間の姿等がモチーフにされています。

大きく心を揺さぶられる展示でした。




ハンセン病(らい病)の詩人桜井哲夫氏との交流の中で描かれた肖像画です。
目が失われ鼻もくずれ頭も変形し、指の無くなったその姿が
緻密に描写されていました。

桜井氏の詩の一つ。


「おじぎ草」  

夏空を震わせて 白樺の幹に鳴く蝉に

おじぎ草がおじぎする 包帯を巻いた指で

おじぎ草に触れると おじぎ草がおじぎする

指を奪った「らい」に 指のない手を合わせ

おじぎ草のようにおじぎした


当時、強い伝染力を持つと誤って認識されていたために、
17歳からの70年を隔離され孤独の中で生きた桜井氏は
「らいになってよかった」と語っていたのだそう。

87歳で亡くなる半年前、
木下氏から東日本大震災の話を聞いた桜井氏は、
「私が合掌する姿を描いてほしい。」と願い、
桜井氏の死後に完成したその絵を
木下氏は、桜井氏が帰りたいと願いながら帰ることのできなかった
故郷青森のリンゴ畑に広げて、
「体は土に帰っても桜井さんの魂はリンゴ畑に生きておられます。」
と語っていらっしゃいます。

木下氏の描く絵の中の桜井氏の姿から、
深い苦しみの中でなお強く優しく生きぬくことで発せられる
神々しい命の光のようなものを、私は感じました。




木下氏の長年のテーマの一つに「合掌図」があります。

時代や国籍、宗教を超えた人間の根源的な祈りの姿としての合掌。

年老いて複雑に刻み込まれた深い皺のある手が合わさり、
上を向くその指先。
切り取り、手のみが描かれた作品のその図は、
大樹の樹皮のようでもあり、
人間が人間である前に赤裸々な命であること、
また同時に人間にしか思いえぬかもしれぬ人生への感、
が直接的に体の中に飛び込んでくるようでした。




「甘え」という作品は、
木下氏の奥様と猫を描いたもの。

うちにいる猫、チミ君が、ときおりまったく同じ表情を見せる、と
微笑ましくも、切ない気持ちで眺めました。

闇を見つめながら描かれる作品の数々から、
「何かに耐え生きるということ、歳を重ね老いること、の力強さ」
を教えていただいた気がします。

ですが、この日記のために拝借してきた画像と私の感想では、
木下氏の作品の素晴らしさは寸分も伝えることができていません。

ご興味のある方、足利市立美術館にて、
10月28日まで展覧会開かれていますので、
ぜひ、足を運ばれてみてください。



| art etc. | 21:26 | comments(2) | trackbacks(0) | pookmark |
コメント
先生

せまい団地の一室で描かれているようですね。
大きい絵が多いので、実物を見ると、感動が大きいです。
素晴らしい絵でした。ぜひ、実物を見てください。
| ひでのり | 2012/10/08 10:42 PM |
木下晋さんの絵は一度見たら忘れられません。彼は町田在住だそうです。彼を知ったのは洲之内徹という人の気まぐれ美術館樋エッセイでした。
写真でしか見ていないので是非一度本物を見たいです。
| ゴリセン | 2012/10/06 9:54 PM |
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